渋谷書店万引対策共同プロジェクトの開始後1年間のご報告

ニュースリリース

2020年12月1日「渋谷書店万引対策共同プロジェクトの開始後 1 年間のご報告」

ニュースリリース
2020 年 12 月 1 日
報道各位
渋谷書店万引対策共同プロジェクト事務局

渋谷書店万引対策共同プロジェクトの開始後 1 年間のご報告
標記の件につき、このほど当プロジェクト第 9 回運用検証委員会が開催されま
したので、以下ご報告いたします。
1.対象期間:2019 年 7 月 30 日から 2020 年 7 月 31 日まで。
2.定量面から
1)登録人数及び件数は 40 名 53 件。
2)すべて万引行為。
3)53 件中 51 件は単独敢行。内 2 件は 2 人組の嫌疑あり。
4)53 件中 13 件は同一人物を登録した当該店、及び当該店以外に再来店。
5)抑止は 7 件。
6)捕捉は 7 件。
7)ロスの改善に関しては、ロス率が前年比でほぼ半分となったところ、ロス金額が約 6 割になったところ、ほぼ前年並みだったところと三者三様に分かれた。
3.定性面から
1)当プロジェクトで実証されたこと
①3書店で万引犯が再来店した事実があることを、顔認証を連携させ、検知、記録をおこない初めて実態の検証ができた。
これまでは、写真であり、従業員の記憶であったが、しっかり技術的に来店証跡と実態がつかめた。
②消費者保護の観点から厳しい登録条件のもと誤認逮捕や誤認対応がなかったこと。都度関係者の教育研修を実施することで関係者の知識や対応の漏れがなかった。
③関係者間での会議を頻繁におこなったことで、細かな課題、問題について解決でき、より慎重に進めたこと。こんな人を登録したいが、プロジェクト事務局にて検討、実施しなかった例もあった。
④意識や運用の組合せで、相乗効果、間接効果が生まれたこと。最新技術も使う人と仕組みが大事で、それらがそろって初めて安全に機能すると確認した。
2)万引被害改善の理由(参加店の声から具体的に)
①渋谷プロジェクトへの参入によりメディアに取り上げられたことで万引犯に敬遠されたのではないか。
②メディアに取り上げられことにより、スタッフがこれまで以上に万引を警戒するようになり、犯行を未然に防ぐことにもつながった。
③従業員が理解してくれた結果、来店されるお客様には「いらっしゃいませ」とお声掛けすることが徹底され、それとなく目線を送って注意してきた。
④お客様をあまりじろじろ見ると不愉快な印象を与えるので、ちらっと目線を送ることだけでもかなりの抑止力となりえた。
⑤コロナ禍の影響による入店客数の減に伴い、万引犯も少なくなったと思われる。
⑥コロナ禍による客数の減少は、同時に店頭スタッフによる顧客へのケアも頻繁に行えるようになり、万引犯が犯行を思い止まる要因になったのではないか。
4.1 年目における課題
1)マスク着用による非検知が、コロナ禍以降数件あった。
2)コロナ禍があったとはいえ、万引きが巧妙に行われるなど、その確認の困難さから登録件数が予想より少なめであった。
3)登録済みの対象者が来店したことが確認されたのに、被害の防止が図れなかった事案があった。
5.上記を踏まえた 2 年目の取組み
1)システム面の課題
①マスク着用の対象者の感知能力向上のための認証機能の改善
2)参加店の課題
①ビデオカメラ登録映像のチェック方式の研究によって登録数を増やし、敢行者を対象として再来店時の犯行を抑止する。
②レジ清算済商品を手に持ったままで退店せず店内に残って居るお客様の動向に注視し、誤認を防ぐため一定の方法を構築する等、スタッフ間で購入済の旨を伝達することを徹底する。
③在庫調査の範囲を拡大し、被害の早期発見を期す。
④社員間のコミュニケーションを深め、入店時の接客のレベルアップを図る。
6.総括
1)プロジェクト開始前に、1 件だけ 1 参加店への抗議があったが、それも開示と同時になくなり、以降アクシデント及び一切のトラブルは起きていない。
2)ロス率の評価は 1 年目では確定できず、2 年目以降に評価したい。ただし各店の決算期が異なるため、そこを精査する必要がある。
3)検証委員からの論評は以下の通り。
〇件数が減っていること自体は大変望ましい。マスク着用で検知できないのかまで含めての検証が必要。
〇取組み自体が周知されたことによってそもそも渋谷に来なくなるということが少しでもあるのであれば、効果はあったということになる。
〇全部説明するものは説明し、誤解に基づく批判もなく、正確に説明できているから苦情も来ていない。技術面は様々な課題があるが、こういった形で進めていってほしい。やはりメディアにも多数露出することで正確に説明していくことで適切に進められきた。
〇コロナ禍で在宅勤務が増える中、インターネット環境におけるセキュリティーフォール(脆弱性)の指摘も散見される。定期的に脆弱性テストを実施することが重要。暗号化と定期的テストが必須である。
〇このプロジェクトを進めていく中で、ただ単に技術を共有すれば解決するというものではなく、それぞれの事業者がそれぞれの工夫でこの技術をどういう風につかえば目的が達成できるのかところの前向きな議論がなされている。そのこと自体も成果と言える。
〇当該技術を使うにあたり現段階において、注意点や活用法についてプロジェクトとして共通認識ができているというところが大きい。
〇自らの取組みについて検証までする活動の内容と質を、当プロジェクトのみでなく、外部に向かって今後しっかりメッセージをしていってほしい。それも合わせ成果と言える。
〇防犯カメラは万能薬ではなく、これを導入することによって、これに携わっている人の意識が変わるそのきっかけになっていく意味合いが大きい。その意味でこの一年間の取組みは非常に有益である。今後この 1年間の経験を踏まえて改善、法令順守、説明責任等を車の両輪として進めていけば、渋谷プロジェクトに対する理解、そして防犯の効果が更に得られる。

【1 年目総括のまとめとして】
各参加店は、今回のプロジェクトに参加したことで、万引きの実態が詳細に把握でき、また、従業員の万引対策の意識向上が見られるなどから、万引対策に手ごたえを感じています。また、心配していた様々な抗議や嫌がらせもほとんどなかったこともあり、より一層、社会一般の理解を得ながら、このプロジェクトに継続して参加し、より多くの成果を得たいと考えています。
当プロジェクトはその意向に沿って、2 年目も参画者全員が今後も最大限の努力を惜しまず活動いたします。
そしてこの活動を財政面や技術面で支えてくれている事務局メンバーや、様々なアドバイスをいただいている専門家の皆様に感謝いたします。
当プロジェクトは法的見解や社会受容性を綿密に検討して進めているもので、形式だけを取り入れた同様の取組みが現れることは懸念しますが、ご相談頂ければ知見の提供等のご協力はできると考えております。
各方面におかれましても当プロジェクトの本質的成果や法的スキームを理解し、かつ社会への受容性を十分担保したうえで、万引犯罪抑止の実を上げることを強く期待するものです。
当プロジェクトは今後とも、その成果を広く発信して参ります。
以上
〇本件に関するお問い合わせ先
渋谷書店万引対策共同プロジェクト事務局
電 話:03-5280-6044
メール:info6@manboukikou.jp