年頭所感

コロナ問題より解決困難な万引問題に挑戦し続ける

NPO法人全国万引犯罪防止機構 理事長 竹花豊

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 全国万引犯罪防止機構は2005年に設立され、以来、懸命に万引防止に取り組んでまいりましたが、これも多くの方々のご支援、ご協力があったからこそと深く感謝申し上げます。

 万引犯罪の現状は未だ厳しく、2002年をピークに大幅に減少をした全刑法犯件認知件数に比べて、万引の減少幅は緩やかであり、2019年の全刑法犯に占める万引の割合は12.5%と年々増加傾向にあります。万引は現場で対処する従業員の負担を招くとともに、他の買い物客に不安を与えるなど、地域社会の安全安心を脅かしていると言っても過言ではありません。  そのような中で、万引対策には新たな胎動が着実に広がっています。一つは、異なる事業者間での万引被害・犯人情報の共有・活用の動きの着実な進展です。もう一つは当事者間の共同による新たな万引対策母体の構築の動きです。

 まず、異なる事業者間での情報の共有ですが、渋谷地区の3書店間における顔認証情報の共同利用による万引などの犯罪防止の取り組みが開始から1年半が経過しましたが、再来店した犯人に対する従業員による声掛けなどにより、所期の万引抑止の成果を上げております。心配されていた個人情報保護の課題もクリアし、関係の有識者の方々の高い評価をいただいております。コロナ問題でマスクをする万引対象者が増え、その影響もありましたが、認証機能の改善が図られ、課題を克服しつつあります。今年は他地域での開始を見据えていきたいと思います。

 また、大量万引発生時に異なる事業者間で個人情報ではないが万引対策上有用な情報を共有する「緊急通報システム」の運用も開始後1年余を経ました。これは、被害日時、場所、被害品、犯人の特徴などを文字情報で共有するものですが、当機構を含め、関係事業者にビビッドな万引情報をもたらし、対策の有効性に確信が生まれています。一部の地域に限られて開始したこの取組みは、今後、地域と参加事業者の拡大が確実な状況です。また、本年の早い段階で、個人を識別できないように加工した犯人画像の共有を行えるように、準備を進めております。

 次に、新たな母体の構築に関してですが、一つは、盗品の処分先として大きな問題になっている、インターネット処分市場問題への対応についてです。ご案内のように、ここ数年、誰でも簡単にオークションサイトやフリマアプリを利用できるようになったことで盗品が数多く流通し、万引きを誘発しています。被害者の皆さんから当機構に対応の要請が卑近にあったことから、主要な関係事業者に呼びかけ、有効な対策の構築を模索してきました。関係のサイトやアプリを運営する事業者は、当機構と手を組んで、というより、当機構の一員となって、当機構内に新たな委員会を設置し、積極的に対応を始めています。昨年は、当機構会員企業からの通報に基づいて警察への情報提供を行い、多数の盗品を出品して利益を得ていた犯人の検挙に結び付けました。今年は、さらに連携を強化してインターネット市場から盗品を排除する仕組み作りを目指します。

 また、東京都足立区では新たな万引対策が始まっています。地域の行政機関が中心となって区内の小売業者や警察署などと連携して本格的な万引対策を行うのははじめてのことで、私たちも大いに期待し、この「足立プロジェクト」を積極的に支援していきます。ここでは、異なる事業者間の連携はもちろん、高齢者による万引き防止対策に新たな展開がもたらされるのではと、新たな胎動に胸を躍らせています。

 さらに、当機構では、一昨年来、ロス対策のお手伝いをするべく、万引きを含めた小売事業者の委員会を設置して検討を進めてきましたが、本年から「ロス対策士資格試験制度」をスタートいたします。これにより、小売業および関連するビジネスにおいて経営管理者として必須の知識および技術である「ロス・プリベンション」のグローバル・スタンダードが根付き、また、多くのロス対策専門家の育成が期待されます。本年の早い段階で、この母体が策定したロス対策の決定本を刊行します。乞うご期待です。

 以上、当機構の取組みを紹介しましたが、このほかにも様々な啓発、研修等の活動にも以前にもまして対処していくこととしております。

 このような様々な取組みを進めてきた中で、私たちは、当機構に多くの小売事業者の参加を促す必要があると強く感じてきました。当機構の存在価値は、万引きという大きな社会問題の解決に貢献するというすぐれて公共的なものでありますが、他方で、万引きで苦しむ小売事業者の味方となり、その抱える悩みや苦労を解決することにもあります。それを可能にするためには、この機構の構成は、この問題に関心を寄せる有識者、警察、検察関係者、防犯機器製造、販売事業者、警備関係事業者はもちろんのこと、小売事業者多数であるべきだと思います。これにより、その活動はより的を得た、また、活気のあるものになると思うのです。

 そこで、私たちは、これまで当機構を構成していただいてきた小売事業者の団体の皆様に、加盟されている事業者個々が当機構に参画することを促していただけるようお願いしております。皆様におかれましても、よろしくお願い申し上げます。

 まだまだ、コロナ禍の出口が見えず皆様におかれましても厳しい状況が続くこともあろうと思いますが、ここに皆様のご健勝、ご活躍を祈念して、年頭のご挨拶とさせていただきます。